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2022/06/14
農業ビジネスを切り拓く【ネットワーク東海6月2週号】
「年明けからの新規就農を決めた。就農の準備と手続きで大変だが、楽しみで仕方がない」と話すのは、鈴鹿市深溝町の酒井一成さん(29)。現在は愛知県で会社員として勤めているが、休日には父・賢治さん(54)が代表を務める実家の「緑賢園」で農業の勉強に精を出す。緑賢園では茶や植木、野菜、水稲と多品目を合計9・5㌶で栽培している。
「将来的に就農したいという思いはずっと持っていた」という一成さん。「普段は家族との時間を大切にする陽気な父が、繁忙期には寝る暇も無いほど仕事に打ち込む様子を目の当たりにしてきた。そんな姿に憧れ、自分もこんな父親になりたいと思うようになった」と幼少期を振り返る。
そんな思いを胸に、農学部のある大学に進学。就農する前に視野を広げたいと、卒業後は現在勤めるガスや石油などエネルギー全般を扱う総合エネルギー企業に就職した。「大きな市場で製造から販売までを体感したい」と人生設計を立て、開発、営業、物流とさまざまな立場で多くの人と関わりながら仕事をしてきた。
「20代は自分が勉強する期間と決めていた。たくさんの経験の中で、販売のスキルや経営のノウハウを身に付けることができた」という。経験を重ね、任される仕事の規模が大きくなっていくことにやりがいを感じつつも、家族との時間を持つことが難しくなった。「30代からは培った経験を基に家族を含めた生活を営みたい」と話す。
就農後の展望について「父の農業をそのまま受け継ぐわけではない」と強調する。「父には父の良さがある。そこに自分の学んできたことを加え、新しい自分の農業へ進化させたい。もちろん、尊敬する父の技術と自分の経験が合わさることに意味がある」と話す。
経営や販売については現職での自信があるという。売ることに関しては「経験を生かして、どのように販路を広げていけるか楽しみが大きい」と前向きだ。栽培に関しては、これまでも手伝っていたとはいえ、経験不足を自覚している。全体を通して、しっかりやっていけるか不安をのぞかせるが、「早く父に追い付けるように勉強したい」と意気込む。
消費者に対して、あらゆるPR競争がある現代。「おいしいから売れる。安いから売れるというわけではない。差別化を意識しながら、手に取ってもらいやすいもの作りたい」と販売イメージが膨らます。一成さんは、「最初は冷たい目で見られたとしても、若い世代ならではの視点でビジネスとしての農業に取り組みたい」と話している。
(横井)