「農業の“手作業が多い、休みがない、労働時間が長い”とい った過酷な労働環境イメージを何とか変えたかった」と話すのは、木曽岬町の 有限会社木曽岬農業センター・取締役の古村英之さん( 28 )。生産効率を上げる スマート農業に取り組むことで、〝子供が憧れるようなカッコイイ農業〟を発 信していく考えだ。東京農業大学を卒業後、 公益社団法人国際農業者交 流協会「JAEC」の海外 研修制度を利用し、アメリ カ西海岸のポテトチップス 用ジャガイモを生産する大 規模農場で、1年半、農業 の在り方や経営について学 んだ。 帰国後、父・精康さん ( 59 )の経営する農業法人へ 入社。現在は英之さんが中 心となり、精康さん、弟の 隼大 さん( 26 )、従業員 15 人 で米作りから 販売、配達ま で一貫して自社で行っている。同社は自作地3㌶から始まり、今では水稲180㌶、小麦75㌶、大豆5㌶の合わせて260㌶を全面請け負いしている。田植え、稲刈り、トラクター作業の請け負いは延べ350㌶。ICTを活用この広さを効率よく安全に回していくには、ICT(情報通信技術)の活用が必須と考える英之さん。「効率が悪いと従業員も疲れがたまり、けがや事故のもとになる。安全に働いてもらうことが何よりも大事」と話す。2016年には、作業の安全と従業員の働きやすさを最優先に考え、農業経営の課題解決をサポートする、インターネットクラウド利用の営農・サービス支援システム「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」を導入した。圃場の場所をスマートフォンで確認でき、作業内容の指示を行うため、入社したばかりの従業員でも間違いなく現場にたどり着き、簡単な作業ならほぼ間違いなくできるようになったという。また、栽培記録を画像で管理し、生育差を基に反省や作業の見直しも可能になった。作業記録が自動で作成されるため、進しんちょく捗情報をマップ上で確認でき、従業員同士で情報共有しながら効率良く作業を進められる。仕事の予定や状況の把握だけではなく、収穫した際に水分量やたんぱく質量を計測し、クラウド上で管理できるのも魅力だという。先代の思いを継ぐ同社では、地域との関係を大切にしている。地元の飲食店や小売業者と連携して地域の米の需要を高め、地域経済の活性化に貢献し、地域との結びつきを深める努力を惜しまない。1995年に食糧管理法が廃止され、自由に米を売ることができるようになったとき、先代が〝直接おいしいお米をお届けしたい〟と地域の店を回って米を届けたのが始まりだ。今でもその思いは変わらず、病院・ホテル・旅館・飲食店・弁当会社など、さまざまな場所へ米を直接届けている。英之さんは「精米して売るところまでが仕事。営業力だけでなく、良いもの(おいしいお米)を適正価格で売ることにこだわっている」と笑顔で話す。