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2023/02/15
自分の個性を品種に 毎年10以上育成も 【ネットワーク東海1月4週号】
四日市市 Coron Cactus 芳山 比斗志(ひとし)さん
「サボテンは水が大好きな植物だと言ったら驚きますか」と話すのは、芳山比斗志さん(42)。四日市市でサボテンショップ「Coron Cactus(コロン カクタス)」を経営し、栽培したサボテンを小売店に出荷している。栽培に取り組むだけでなく、毎年10以上の新品種を生み出す“サボテンブリーダー”だ。
元々は生花店を目指していた芳山さん。20歳のころ、インターネットで検索したサボテンの世界に将来性を感じ、栽培の道へ進んだ。当時は栽培の情報が少なく、全国のサボテンショップを巡って情報を集め、滋賀県の「廣仙園(こうせんえん)」で5年間修業し、Coron Cactusを設立した。
芳山さんのほか、社員3人と育種家を目指す研修生2人の合計6人で営業する。「栽培歴は20年ほどになりますが、軌道に乗ってきたのは15年目から。失敗も多かったですが、その分勉強できました」と話す。
現在は千品種を超えるサボテンを栽培。希少な品種が多く、それぞれに肥料や水の管理が違い、水の量が少なければ枯れてしまうこともある。「水が無くても育つというイメージを持つ人が多いですが、それは夏と冬の休眠期だけです。春と秋の活動期は、土が乾いたらたっぷり水をあげてほしい」と話す。
サボテンといえばとげをイメージするが、芳山さんが栽培するものは、とげが無く、かわいらしい外観が多い。幹全体を星のような細かい白斑が覆うアストロフィツム属は、比較的育てやすく女性にも人気がある。栽培した8割以上を全国のサボテンショップに卸すため、県外のファンが多い。昨年7月に東京で開かれた展示会では、用意した100鉢がすぐに売り切れた。
近年は、Coron Cactus産品ということで買ってくれる客も多い。「ありがたいことですが、同じ品種でも個性があるので、サボテン自体をよく見て選んでほしい」と笑顔を見せる。コロナ禍以前は、海外から買い付けに来る客も多かったという。
芳山さんは毎年、10品種以上を新たに生み出すが、残るのはごくわずか。一つの品種を育成するために交配させ、採種して播き、販売できる状態にするまで3年以上かかるという。「新品種も人気が無ければ、栽培し続けることはできません。しかし、売れるからといってライバルたちと同じような品種を育成しても、自分の個性が出ません」と芳山さん。人気品種を造るのがブリーダーの醍醐味(だいごみ)だという。
「今後、どのような品種を造るべきかを常に考え、知識や技術をブラッシュアップしていく必要があります」と話す。近年、観葉植物の世界もグローバル化が進んでいるため、ライバルは日本人だけではない。芳山さんによると、サボテン栽培技術の世界でトップレベルにいるのはタイ、中国、台湾の育種家だ。日本の栽培技術も上がってきているが、彼らは、もう一段高いところにいるという。
「世界一のブリーダーを目指すと簡単に言える業界ではありません。しかし、世界で通用するレベルであり続けたい」と芳山さん。「生き残っていくには、ライバルたちが手を付けていない部分を開発していかなければいけません」と続ける。現在、研究しているのは「サボテンの復刻版」だ。戦後に流行し、その後廃れてしまった品種を現代風にアレンジして、シリーズ化したいという。
〈2023年1月4週号 東海版〉